ニイタカヤマノボレ
 
若者のことを若者と呼ぶにはまだ私は若いつもりではいるんですけど、生え際の後退も「おでこが広いんだよ」だけでは説明できなくなってきていますし、笑うと小ジワができるようになりました。どうやら若者を若者と呼ばないことにはいけない歳になってしまったので、不本意ながら若者を若者と呼ぶことにしました。

最近の若者はコミニケーションの取り方が上手ではないと聞きます。しかし自分も昨日まで若者の一員と思い込んでいたこともあいまって、言われている程ではないと思っていたんですが、どうやら思い違いだったようです。コミニケーションの欠落を目の当たりにしたからです。

昨夜バイト先のコンビニでの出来事です。相方の学生(以下K君)が見知らぬ女の子から手紙をもらいました。20歳前くらいの女の子(以下S子)からです。数日前からK君の名前を他のバイトから聞き出したり、買物するわけでもないのに何度も店内に入ってきたり、外から店内をきょろきょろと覗いていたり、とにかく来ると帰らないんです。S子が1人であれば明らかにストーカーだったんですが、毎回友達連れということもあって、K君に告白でもするんじゃないのかと予想しながら事態の推移を見守っていました。すると案の定。私がレジから離れた隙にS子はK君に近づき、手紙を渡して去っていきました。事は予想通りに進んだわけです。と、ここまでは普通だったんですが。

K君には彼女が居るので、知らない女の子から手紙をもらっても迷惑なだけですし、実際ひどく迷惑そうな顔をしていました。なのでどうでもいい感じで「見ます?」と、その手紙を見せてくれました。事の流れからして当然そこには愛のメッセージやらデートの誘い文句が書かれていると思ったんですが、なんか違うんですよね。そもそもただの紙っぺら。遺書とも見まがうような走り書きが4行。
>よろしければメールください
>xxxxxxx@xxxxxx.ne.jp
>090-xxxx-xxxx
>S子
どう考えても、誰が考えても、ラブレターじゃないといけないんですよ。それが一体なんですかこれは。まるで伝えたいことがわかりません。下の3行はメアドと携帯番号と名前なので、実質S子の言葉は1行というか、たったの13文字になります。宝の地図だってもう少し親切ですよ。まるで暗号ですね。
仕方なくK君と私はこの暗号の解読を始めました。とりあえずラブレターの一種であるということは2人で一致したところなんですが、どうしてもわからないんですよ。「よろしければメールください」と言われても、一体全体何がよろしいんでしょうか。たとえよろしかったとしても、メールをしたところで今後の展開がまるで読めません。一言「好きです」とでも書いてあれば、「彼女が居るんで困ります」とか「僕はホモなんで興味ありません」とか断りようもあるんですが、そもそも告白の類の言葉が書いていないので断りようもありません。かといってK君がごめんなさい的なメールをしたところで、メールをしたということはよろしいことになるかもしれません。何がよろしいのかがさっぱりわからないのにです。とにかく非常に難解な暗号です。

手紙をくれたということは、どうやらコミニケーションを図りたいようではあるのですが、手紙をもらった側が送り手の言葉足らずを補完しなくてはならないような事態は、これはコミニケーションとは呼べないでしょう。伝えたつもりで伝わっていないということは誤解を生むだけですし、誤解を生むようなコミニケーションはすでにコミニケーションではありません。最近の若者がコミニケーションが取れないということを、肌で感じた出来事でした。

ところでこの暗号、K君と私でひとつの結論に達しました。S子のこの手紙、これは何かの罰ゲームに違いないという結論です。結局K君は、全然よろしくないのでメールはしないことに決めたようです。
 
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