君子、盆と正月に近寄らず
 
安全運転にはひどくうるさいんです。ほんとやかましいんです。自分でもどうかと思うくらいうるさいんです。病気が原因で運転を止めて、6年前からいつも助手席なんですが、彼女の運転に乗る度に難癖つけるものだから、それが原因で彼女がPTSDになりそうなくらい、それくらいうるさいんです。それというのも私が以前に運転の仕事をしていたということと、アマチュアながらレーサーだったということ、それとやっぱり事故を経験していることが大きいからかもしれません。

だからって自宅の近所で自転車を跳ねてしまったり、制限速度30キロの峠道を140キロからスピンしてしまったり、そんなことしてた私が説教じみたことを言ったところで説得力に欠けますし、それこそ「大きなお世話」だと言われそうですが、ひとつくらいは役立つ話もあるかもしれませんので、気の長い方は最後まで読んでみてください。そもそもが真面目な話になるのかということが疑問ではありますが。

自動車における技術の進化は目を見張るものがあります。安全や事故防止に対する技術には特筆すべきものがあります。が、しかしです。(メーカーによって呼称は異なりますが)ABSとかTRCとかVSCとかには私はあまり賛成できません。今では当たり前のような装備ですが、そんな装備はむやみに搭載するもんじゃないと考えています。
※ABSとかTRCとかVSC--いずれの技術も車の限界を引き上げるもの。緊急時にドライバーのコントロールできる範囲が大きくなる。つまりドライバーのミスをこっそり隠してくれる。

確かに前述の装備があれば事故は減ります。どういうことか話を単純にしますと、ドライバーが50キロで起こしていただろう事故を、例えば100キロまで何事もなかったようにしてくれるわけです。確かに安全と言えば安全かもしれません。しかしドライバーが50キロでひやりとなる場面のはずが、それが100キロまでやってこない。50キロで事故ってもまだ助かる見込みはありますが、100キロで事故ればまず死にますよ。酔っ払って殴り合いしているようなものです。ケンカして殴り合いしたって自分も相手も痛いですから加減があるわけで、せいぜい鼻血出して終わるところです。この「痛み」が事故の「ひやり」なんですが、しかしこれが酔っ払い同士だと抑えが利かない。大怪我してしまいます。ちなみに私、正月に酔って冷蔵庫とケンカしまして、小指の骨を折ってしまいました。皆さんも家電とケンカするときは気をつけてください。

けどこのような装備に反対しているわけでもありません。「車は限界を超えるとこうなる」ということを教習所で教えたらいいんですよ。むやみに限界ばかり引き上げたら、ドライバーが気が付いた時には毎回大事故になってしまうじゃないですか。チェーンの付け方なんて教えてる場合じゃないですよ。スキーやボード行けば嫌でも覚えますよ。原付に積載できる荷物は30キロとか教えてる暇だってないですよ。常識で考えたら2ケツが限界ですよ。たった1回でいいですから、広い場所で目一杯ブレーキ踏ませる講習をしてください。タイヤがロックしてる間は、目の前に親が居ようが子どもが居ようが轢き殺すほかない。ということを体で覚えることが最重要だと思うんですけどね。

さてここで、安全のために簡単にできでることが3点あるので、その話をしたいと思います。

1点目はシートベルトをすることです。当たり前ですけどけっこうしていない人は多いです。事故った時にフロントガラスを突き破って街路樹にどうしても引っかかりたいというのなら話は別ですが、私は2度シートベルトのおかげで助かり、生き残ったおかげで今でもエロサイトに遊びにいくことができます。ですからシートベルトをしてからキーを回すような習慣が良いと思います。「高速だけシートベルトをする」という人が居ますよね。高速で事故やったらシートベルト関係なくまず死ねますから。だったら「一般道だけシートベルトをする」ほうがよっぽどましかとは思います。

そういえば以前に取引先の保険屋の助手席に乗った時のことなんですが、私がシートベルトをしたらこう言うんです。「おれの運転が信用できないのか」と。彼は保険屋のくせにシートベルトはしてません。なんてばかげたことを聞くんでしょうか。信用してないに決まってるじゃないですか。さすがに正直には言えないので「バカが突っ込んでくるかもしれないじゃないですか」と答えたんですが、「なぁに大丈夫だよ」と根拠のない答えが返ってきました。しかも根拠もない上に自信満々に。ひょっとして、こっそり私に生命保険でも掛けていたんでしょうか。

2点目は危ない車に近づかないことです。君子危うきに近寄らずです。トラックや大きい1BOXがそうですね。トラックとかの後ろを走っていたら全然前が見えないですから。もし前のトラックが人を轢いたとしても見えませんし、そこで真後ろを走っていたら轢かれた人にとどめを刺すことになってしまいます。前のトラックが業務上過失傷害で自分が業務上過失致死。やりきれません。

土日はサンデードライバーの後ろとかも危険ですね。右にウインカー出しておいて平気で左に曲がりますから。けど実はサンデードライバーより危険なドライバーが居るんですよ。私はヨンデードライバーと呼んでいるんですけどね。ヨンデードライバーは連休の観光地に多く出没します。盆と正月だけ運転するという、大変にお目出度いドライバーのことです。ドアミラーをたたんだまま走っているのが目印です。気を付けましょう。

3点目は暗くなる前にライトを点けることです。北欧では昼間でも当たり前にライトを点けて走っています。北欧仕様車はバイクと一緒で、エンジンをかけるとライトが点くようになっているからです。最近では運送会社のトラックやバスタクシーはけっこう昼間でも点けてますよね。かの中嶋悟も言っていました。「おれはここを走ってるからぶつけてこないでくれ」ということだそうです。全く正論ですね。なにせ私は夜に無灯火の自転車を跳ねたことがありますから。ちなみに私に跳ねられた自転車の女の子は、親に内緒で彼氏に会いに行くところだったそうです。だから無灯火だったんですかね。
 
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