いいことをしたので気分が良い
 
バイト先の向かいが交番です。コンビニには忘れ物や落し物(以下拾得物)が多いんで、向かいの交番に届けるわけですが、これがなかなか面倒くさいんです。ビデオ屋の返却ポストのように拾得物ポストがあればいいんですけどね。書類を作成してもらわなければならない上に、そもそも交番に警官が居ない。大抵はパトロール中。同じ24時間営業で働く者としてはどうしても許せませんねこれは。コンビニに買い物に入って店員居ませんでしたじゃ済まされませんから。書類の作成がこれまた面倒なんですよ。店の名称から住所から電話番号まで。そして店長の名前だけならまだしも、店長の年齢とか住所まで聞かれるんですから。こちとら代理ですからね。住所はコンビニの住所で済ませてしまうからいいんですが、年齢とかさすがにわかりません。仕方が無いので適当に答えるんですが、雇われの手前「知りませんが若く見えます」とか断りを入れてから答えておいたりもします。

そんなわけで拾得物がありますと、皆がこぞって敬遠します。まるで何事もなかったように。しかしうちも預かり所ではないですし、貴重品などはあまり預かったままにしておきたくないのが本音です。できれば交番に責任を丸投げしたいので、私なんかは預かったらすぐさま届けるようにしています。おかげでいつの間にか交番は私が窓口になってしまっているわけなんですが。

しかし唯一預かったまま届けていない品があります。それは金属バット。いや、これはいいんですよ、うちで預かったままにしておいても。預かった形のまま夜勤の護身用として有効利用させて頂いてますから。圧倒的にリーチ長いですからね。矢と鉄砲以外なら鉄板で撃退可能です。ま、これが活躍する場面には出会いたくないのが正直なところですが。

忘れ物の筆頭は傘。実際のところ忘れていくというより捨てていく感覚じゃないでしょうか。店を出て雨降ってるのにわざわざ好んでびしょ濡れになって帰るわけないですもの。だいたい置いていかれるのは傘としての人生をまっとうしたボロばかりですから。具合がいいのは店員の置き傘として第2の人生を送るわけですが、そうでない傘は処分に1本100円かかるので、できれば置いていかないで頂きたいですね。

次に多いのは免許証でしょうか。コピー機に忘れていくお客が多いですね。どうやらコピーの写りに満足して本物が不必要になるようです。大抵免許証の写真は写りが悪いですからね。これは納得できます。

免許証と同じくらい忘れ物が多いのはキャッシュカードです。ATMが設置してあるので仕方の無いことですが、取り忘れると「カードをお取り下さい」と連呼されるはずなんですがね。突発性難聴が現代病として市民権を得る日も近いようです。1度カウンターの下から古いキャッシュカードを見つけたことがあります。さすがに見なかったことにはできなかったので、ハサミ入れて捨てました。もう存在しない銀行でしたし、問い合わせもありませんでしたから。ええ、ハサミを入れる気遣いは必要だと思います。
※突発性難聴--あるとき突然に、通常片側の耳が聞こえなくなる病気。都合の悪い時だけ耳が遠くなるのは病気ではない。

そして財布。財布を落とすことを生業としている友達が2人居るのですが、どうやらお客にも居るらしいのです。財布道を究めるには店内で落とす荒行も必要なのですね。感服しました。

おかしなものも落ちているわけで、(楽器の)サックスを拾った時はさすがに驚きを隠せませんでした。そして驚きと共に心配もしました。「今日のライブはどうするんだろう」と。幸い当日にライブの予定はなかったようで、問い合わせはありませんでした。どうやら売れない楽団員だったようです。それはそれで心配ですが。

さて前置きが長くなりましたがこれからが本題であります。本日も例によって交番係の私が定期入れを届けました。親切にも拾ったお客が店に届けてくれたのです。店の外で。歩道に落ちていた定期入れを、です。なんでうちなんでしょう。向かいに交番あるじゃないですか。

文句を言っても仕方が無いので届けるほかありません。運良くパトロール中ではありませんでした。パトロール中だと交番内の電話で本署に連絡しなくてはなりませんから。どうやら早く済ませられそうです。「すいませーん」「おはようございまーす」「どなたかー」しかしいっこうに出てくる気配はありません。パトカーもバイクも置いてあるのですが、誰も出てこないのです。やっぱり本署に電話をしなくてはならないようです。そしてようやく無線で呼び出してもらって出てきたのは、どう見ても寝起きの警官。目をしばしばさせています。なんだか応答もあやふや。パトロールのほうがまだましだ。

そんなわけで寝起きの警官に書類を作成してもらったんですが、定期入れや財布の場合は、中身を確認して書類に書き込まねばなりません。そこで中身を全部広げるわけなのですが。定期、スイカ、地下鉄のカード、バスカード、キセルに使った切符等々。旅に出るつもりだったんですかね落とし主。ともかく警官が書類を作成していくのですが、この警官どうも鈍いんです。寝起きを差し引いても鈍い。よく見たら随分若いです。どうやら新米警官のようです。

「ここは○○ですね」「そこはいつもこう書いてますね」と、何故か警官に書類作成を教えてる私がそこには居ました。「はぁぁ、プロですねぇ、警察官になりませんか」などと危うくヘッドハンティングされてしまうところでした。年齢制限で無理なんですけどね。

そんなフランクな新米警官にひとつ質問をしてみました。どうしても気になっていたことです。私は通報マニアではないのですが、コンビニ夜勤がもうそろそろ5年。しかし5年間に5回も110番をしたことがあるのです。110番する時は当然私の判断でするわけですが、実際は大したことない事で呼んでいるのかもしれません。さすがに5回も強盗に遭っているわけではありませんから。「些細な事かもしれないのに呼んでしまってもよいのか」という質問です。すると新米警官はこう答えました。「何かあってからではまずいですから、そうなる前に呼んでもらっても結構です。じゃんじゃんかけちゃってください」と。フランクな上にすこぶるフレンドリーです。こちらの気持ちを良くわかっていらっしゃる。あなたはきっと立派な警官になれると思いますよ。ただしそうなるには書類を書く練習が必要かとは思いますが。

ところで昨夜も110番してるんですね。「キキーッ!ガシャン」という音を聞いたので野次馬根性をいかんなく発揮して表の様子を見にいったのです。何がどうぶつかったのかは全くわからなかったのですが、当事者と思われる男女2人が言い争いをしていました。言い争いというか、一方的に男性が物凄い勢いで怒鳴り散らしていただけなんですがね。しかし店の目の前で具合は悪いし、事情も知らないけど怒鳴り散らされてる女性がなんだかかわいそうになり、110番を決意したわけです。

以下110番での警官とのやりとりです。かなり曖昧ですが。
「警察です。事件ですか、事故ですか」
「事故だと思います」
「あなたは目撃者ですか」
「音だけ聞いたんですけどね。どうやらぶつかってます」
ここで事情を説明しました。電話先がコンビニだとは相手方ではわかっています。
「事故があったんで表へ出てみたらですね、多分当事者だと思うんですが、大声で怒鳴りあっているんですよ。いつ喧嘩が始まってもおかしくないんで、来てもらえますか」
「男性2人ですね」
「いや、おっさんとおねーちゃんです」
しばし沈黙。いや、おねーちゃんが殴りかかっても話としてはおかしくないじゃないですか。
「揉めてるんですね」
「ええ、殴り合いになるのは時間の問題です」
「じゃぁ警察官を向かわせます」
「ええ、よろしくお願いします。早く来てください」

警官が来たときに誰も居なかったら拍子抜けですからね。揉めてるうちに来てもらえると嬉しいです。これで単なる痴話喧嘩だったらご足労ですが。
 
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