第六話・長靴履いたうさぎの世界一周 後日談

登場人物紹介

よっしー

時に2001年7月6日、隠しエキスパートコース「ワールド」をクリア。だがなにやらうかない様子。

ベルベットくん

インド生まれ(本当)のにくいあんちくしょう。発言に屈託がない。日本に居候中。その正体は依然謎。

〜都内・某六畳間にて〜

ベルベット「何はともあれ、これで無事に世界一周とやらは終わったわけだ。
      だがそのうかない顔はいったいなんだ? 飯がまずくなる」

よっしー「確かにクリアはクリアかもしれん。
     だが、三倍速とランダムを使用したという事実が依然引っかかるのだ」

ベルベット「まだそんな事を言っていたのか。あえて言おう。クリアはクリアであると。
      端から見ると自分で自分に枷をつけているようにしか見えないが、どうか」

よっしー「……枷という言い方は半分正しく、半分間違っている。
     確かにゲームのルールの上では間違いなくクリアだ。倍速にしようが、
     ランダムを入れようが、二人で叩こうが、機械はそこまで結果を追求しない。

ベルベット「また始まったな……一応最後まで聞いてやろう」

よっしー「だがしかし!(ガカッ) 等速、オプション無しでクリアして初めて体得……!
     これはオフラインの席で二、三回話したことのある私のポリシーだ。
     ポリシーと言うよりも、一度たりとも人に強制したことのない、
     俺チャレンジであり、俺ノルマであると言える。
     三倍速よりは二倍速、二倍速よりは等速……。
     機械には……機械には絶対に解らない『俺ステップアップ』なんだよ!」

ベルベット「……お前を見ていると目標の設定と、枷の差が解らなくなってくる。
      ぶっちゃけた話、機械の理解が及ばない外側で勝手に悩んでいるようにも見える」

よっしー「そうだ! これは機械にゃわからねぇ話さ。
     だから必然的に自分との闘いになる。人と機械では無く、人と人の闘いになるのさ。
     自分に……自分に嘘をついてクリアしても、嬉しくは無い……ッ」

ベルベット「……まぁ、やりたいようにやればいいさ」

よっしー「長靴は……いいよなぁ。足を、足を守ってくれる……」

ベルベット「?」

よっしー「島本和彦のマンガに……『逆境ナイン』って作品があってよう……
     今でも忘れられないセリフってのがある。
     『できる男は振り返らない。
      なぜならゴールした瞬間に新たな目標が見えてしまうからだ』
     ……確かこんな言葉だったな」

ベルベット「おおおい……!」

よっしー「ダメなんだ! もう、もう次の目標が見えちまったんだ!
     見えたからには、もう自分に嘘はつけないッッ!」

ババッ!
(イメージカット・青空に投げつけられる長靴)

よっしー「次は全曲等速、ランダム等のオプション一切無しで
     隠しエキスパートコース『ワールド』を駆け抜けるッ!」

ベルベット「うわあああああっ!
      俺の、俺の悪い予想が当たったああああぁぁ!」

ベルベットくんの叫びが六畳間にこだまする。

ベルベット「クリアできる見込みはあるのか!?」


 <つづかせる>