よっしーとポップンの歩み・出張版
第X話「かいま見えた理想」
今でも思い出せます。
ポップン4が出回り、5の息吹が聞こえ始める前のことです。
いざポップンを叩きに筐体の前へと歩みだしたとき、二人の女性がポップンの最中でした。
ポップンは初心であるらしく、二人でボタンを割り振り、低難度の曲を叩いていました。
二人でポップン。ポップンの、もう一つの形。入り口の形は一つにとどまらず、僕らにあわせて出迎えてくれる。
誰もがここから始まったのだ。懐かしく、後ろで見ていた。
三曲目、最後の曲と知ってか知らずか、難度の高い曲を選ぶことに決まったようです。
選ばれた曲は『フューチャー』。難度ゲージが手頃だったのでしょうか。それともアイスくんが気に入ったのでしょうか。
誰もがそうであったように、ポップくんの姿を目で追ってしまい、上手くリズムを刻めない。
あぁ、駄目です。ボタンを叩かず叫んでいる場合ではない。ここでプレイを投げ出してはいけない。
ここでまた別の記憶が揺り動かされた。
ポップン初心者であると思われる女性。一人で叩いている。使用キャラはマリィ。
キャラチェンジも、ハイスピードの入れ方も知らない様子。
たどたどしく曲を選び、難度ゲージの低い『ティーンフォーク』を選曲。
だがしかし、低難度でありながらGREAT判定の辛いこの曲を、彼女はクリアできなかったのです。
コンティニュー画面に切り替わる前に、足早に筐体から立ち去る。
あぁ、待ってくれ! これを理由にポップンを嫌いにならないでくれ!
一方、『フューチャー』を叩いていた二人の女性。
終盤の「滝」をとらえることも叶わず、訳もわからぬまま終わった様子。
やはりコンティニュー画面に切り替わる前に、筐体から立ち去る。
立ち去り際、筐体に向けて中指を立てて行く。
そして振り返る。よっしーと向かい合う格好だ。化粧に覆われた顔が、私の顔を睨み付け、脇をすり抜けて行った。
そう、きっとこの私も
また、彼女を睨んでいたに違いない。
後日、同じ筐体にて再びポップン4を叩きに出かけた。
やはりその時も二人の女性が、今まさにポップンを叩こうしているところでした。
二人は友人であるようです。お出かけの最中にゲーセンにでも寄ったのかな、と勝手に後ろで想像していました。
荷物を友人に預け、100円を投じ筐体の前に立ちました。一人で叩く様子です。
荷物を持った友人は、隣で興味深そうに立っています。
手慣れた手つきで黄色のボタンを叩き、キャラクタールーレットをくるくると回す。
マイキャラは、ポップン3仕様の2Pショルキーでした。
どこまでポップンを知っているのか、どこまでやりこんでいるのか、急には判別できませんでした。
新曲を選んだかと思うと、旧曲を選んだりもする。叩くときは真剣そのもの、叩き終わる度、隣の友人と微笑みあう。
最後に迷い無く選んだ曲は『パワーフォーク2』でした。
思うようにゲージが上がらない様子でしたが、プレイを放棄することもなく、最後までまっすぐ画面と曲に向かい合って叩きました。
ゲージは半分ほどで上昇を止めました。アッシュくんの敬礼で、ゲームが終わる。
照れくさそうに、あるいは満足そうに友人から荷物を受け取り、筐体から立ち去ろうとしました。
連れの方はポップンをやらない様子です。
お出かけの最中にゲーセンに寄ったという想像も、あながち外れていなかったのかもしれません。
私の横を彼女たちがすり抜けるとき、ゲーセンの雑踏を飛び越え、二人の会話の一部が耳に飛び込んで来ました。
「負けて悔いなし」
笑顔を浮かべ、たった1プレイで彼女たちはゲームセンターから去っていきました。
この出来事は深く胸に落ち、今でも思い出せます。
きみはポップンが好き?
ゲームが好き?
キャラが好き?
音楽が好き?
何故、自分はポップンがこんなに好きなのだろう。
この時の出来事の中に、間違いなく何かを見た。
ポップンの何が好きなの?
ゲームとして好き?
キャラが好きなだけなの?
音楽が好きなだけなの?
断定という形で言い切ってしまうことは簡単だった。
そう、ゲームとして好き。キャラは関係ない。
そう、キャラが好き。音楽はどうでもいい。
そう
断定という形で言い切ることが、今でも出来ないでいる。
この日の出来事の中に、そんな二元的な回答を越えたものが、一瞬見えたような気がしてならない。
今でも思い出せます。
あの時 確かに何かが
<完>