Ash(アッシュ)
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Smile(スマイル) 〜オバケは死なない〜
耳を澄ませば聞こえてくる、気が付けばそばにいる。神出鬼没で愉快痛快、全身包帯の愉快なオバケ。「ヒッヒッヒッ……ボクのこと呼んだかい」。宙に口のようなものが浮いている。いや、たちまち現れる包帯オバケ! 青い髪に、お下がりのコート?
「ギャア!」
割と夏の風物詩。
彼の名はスマイル。名は体を表す? ユーリの結成した妖怪バンド、Deuilのベーシストとしてスカウトされる。ユーリ同様長生きで、相棒にはうってつけ。バンド? いいともいいとも。楽しいことは大好きさ。音楽だってもちろん大好き、ほら、ギャンブラーZにもこんな流しのカッコいい敵が居ただろ? 大人気のアニメ番組、ギャンブラーZ。年齢が三桁の彼が、最近見つけたお気に入りなのだ。しかし世の中の子供とオバケに夢と希望を与えているとは、トオルもヒロシも知らないだろう。
人は歳をとると子供に戻るという。オバケとてスマイルぐらい長生きすると、いいカンジに毎日が楽しくなるのかも知れない。そしてこぼれる微笑み。「ヒッヒッヒッ」。……これは微笑みとはちょっと違う。
そんなスマイルのヘコみ顔は、ダラリと手が落ちる!? いや、落ちたのは手袋だ。でも包帯でバネのように宙づりになっているぞ。意図的なおもしろい仕掛けと見た。そう、オバケは人を脅かすのが仕事だからね。このぐらいの仕込みはするのさ。
「おっと、この時はつま先をそろえるのがポイントだよ……ヒッヒッヒッ」
オバケってのは、本当に毎日が楽しい。死んだりしないし、夜中は墓場で大ライブ、と来たもんだ。
総合評価
★★★★★★★★★★(10)+ (+_+) |
Yuli(ユーリ) 〜ザマス?〜
メルヘン王国北部……常に「夜」に設定されたその空間の真ん中に建つ一つの古城。そここそが200年の眠りから覚めたヴァンパイア、ユーリの根城だ。メルヘン王国……ってことは彼、ディーノくんの統治下にあるのか? いや、まさかね。
さて、200年という時の流れは、彼にとってどんな意味を持っているのでしょう。……もう、完全に人間の時間の感覚とは異なるはずです。魂をも溶かしだしてしまいそうな時の流れは、彼に血の吸い方をも忘れさせてしまったのです。では、彼を待っているのは緩慢にして残酷な衰弱死!? あ、なんか人間と同じように普通に食事なんかしたみたいです。意外にアバウトだな彼。
そしてこれまた「暇だったから」というアバウトな理由でヴィジュアル系バンドなんか立ち上げてみたり。そう、永遠の命を持つユーリにとって、一番恐ろしいものは「退屈」なのです。人間のように食事をし、人間の真似をしてワイングラスを傾け、人間と同じくらい短い命の薔薇を愛でる。そして、白く細い指先で残酷にも薔薇を散らせるのだ。
メルヘン王国の裾野を離れ、ポップンパーティーに参加を表明したのも、退屈しのぎだったのでしょう。かまわない。冷たい石棺の中で眠るのも、もう飽きた。集まったバンドのメンバーにも満足しているし、何より人間と行動を共にするのは、面白いし飽きない。そして「人間の真似事」をするのは、今もっともお気に入りの彼の遊びなのだ。
そんなユーリのヘコみ顔は、きっと人間の物真似。
「どうだアッシュ、今のはへコんだ人間にそっくりだったろう」
「えーっと……いいんじゃないッスか」
彼の遊びは、もう少し続く。
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