ポップン七夕祭り〜祭りの後〜

2001.7/8

七夕の後には、決まってこのゴミが多くなる。
そう、笹と短冊だ。毎年この時期になると、燃えるゴミとしてこいつがうなるほど流れてくる。
そしていつもやるせない気分になるのさ。
願いを書き込んだ紙が、こうしてゴミとしてひとところに集まるとな。

仕事の手を休めて、短冊の一枚を拾い上げる。
人の願いをこういう形でのぞき見るのは趣味ではないが、いったいどんなヤツらがどんな願いを書き込んでいるのか興味がわいた。そうだ、言うなれば人間観察か。
都合の良い言い訳を頭に思い浮かべながら、休憩……ていの良いサボりを実行した。

手近な一枚を拾い上げる。
この辺の笹は小学校での七夕祭りで使われたようだ。あどけない文字で、願いが書き込んである。多くは無邪気な願い(*1)。形あるものを求める願い(*2)、形のないものを求める願い(*3)。かなうものもあり(*4)、また、かなわぬものもあり(*5)
悩み事も多く見受けられた(*6)。恋の悩みなどはまだかわいいもので(*7)、なかには常軌を逸したものも(*8)
あぁ、どこまで読み進んだのか。

そういえば、七夕は誰に向けて願いを書くのだったか。織姫? 彦星? 神や仏じゃあるまいし、それはなにかおかしいような気がする。昔の伝承に基づいて行う祭りに、人間の欲望なり何なりがいつの間にか貼り付いたのか。
勝手に、そのように納得した。
大きく伸びをする。腰をかがめてこんなものをつぶさに読み込むのは疲れる。もともと文字を読むのは苦手だ。
空を見上げる。集積場から見上げる空は、西新宿のビルに切り取られ、いつでも四角い。
ここでまっすぐなものは、太陽の光だけだ。
射し込む光に、目を細めた。

日の光を避けるように、帽子を深くかぶり直す。
そういえば、俺の願いはいったい何だったか。いつの間にか、願いを口にすることがやましいことであるかのような考えにとりつかれていた。見知らぬ人々の願いを読んでいくときに感じた違和感は、このあたりに原因があるのかも知れない。

俺の、願い。そう、俺の願いは……。
この街を、この街の薄汚れたところを綺麗にしたかったんじゃないのか?
その為には、自分の手が汚れても構わない。
自分が汚れるのは、苦にならない。
泥をかぶるのは、もう俺一人で充分だ。

動きから迷いが消えた。
願いの束を、願いの山をどんどん処理していく。
星に届かなかった願いのかけらか、あるいは人間の欲望の垢か。
もう短冊を拾い上げようとも思わない。どんどん、どんどん処理していく。

俺が、俺が汚れる分には



(*1)
今日はディーノくんの誕生日。
「パパ、ボク王座が欲しい!」
「まだダメッ」

(*2)
ローリィには、今どうしても欲しいものがあった。
「パパ、あたし実弾を撃てるショットガンが欲しい! 至近距離で悪党の頭を吹き飛ばせるようなヤツ!」
「絶対ダメー!」

(*3)
キカさんの最近の悩みは、宇宙修学旅行時に高校生から「恋人は居ますか」と訊かれがちなこと?
いいえ、その質問が飛び出たときシャトルの操縦士
(49)が「ぼくでーす」と手を挙げることだ。
新人時代に「あてんぴょんぷりーず」とどもってしまった過去を、本気で消したがっている。

(*4)
地球征服 by トラン
「実現すると困るんですがッ!?」

(*5)
「はやく人間になりたい〜」
 by ピーノ

(*6)
「そうそう、アイツのことは絶対鼻メガネって呼ぶなよ。マジギレするからな」
ヒグラシの友人談

(*7)
ヤードくんには一つの願いがあった。
六代目の立派なバグパイプ奏者となった暁には、あこがれのヤド子さんにプロポーズするのだ!
「えーと……どれがヤド子さん?」
「ほら、たき火を囲んでいるなかの、リボンがついてる……」

(*8)
「やりたい事は何だ? やらなきゃ損だ、大損だー!
 オラー行け行け行け、おーとーこー、おーんーなー!(略)」
(原文ママ)



モードセレクトへ

Presented by yossy