第五話・さようならポップン5

 2001年4月27日。この日はポップンミュージック6のアーケードリリースの前日です。逆から言えば、ポップン5を叩くことが出来る最後の日という事です(いや、ゲームは残るだろうが)。幸いにしてポップン5を叩きに行く時間を取ることが出来たので、さっそくゲーセンへと赴きました。

 最新作を控えている時と言うこともあり、順番待ちをしている人は居ません。これを幸いとさっそくプレイ開始です。思い返せば、ポップン5はノーマルスピードでの挑戦、と言うのがメインテーマであったように思います(第三話参照)。最初に選んだ曲は……ハイパー『パラパラ』です。
 ポップン5が出てからしばらくはハイスピードを入れてプレイしていました。このハイパー『パラパラ』も、ポップン5がリリースされた当日に初見でクリアした曲です。ですが、ノーマルスピードに切り替えてからは、なかなかクリアできずに苦労したことが思い出されます。非常に叩くタイミングのつかみにくい曲で、なかなかきれいにGREATが取れません。ノーマルスピードでどうにかゲージギリギリでクリア出来るようになった頃のスコアは、GREATがGOODともに200前後、スコアは五万点台でした。現在ノーマルスピードでは、よほど調子が良いときは七万点に届きます。ハイスピードを入れていた頃は、七万点は楽に取れました。そして今日のスコアは六万五千点台です。

 「一応訊くけど……おいらのポップンをどう思ってるの?」
 「はっきり言って下手ですね!
  でもポップンやらない人が見たらうお〜、上手ぇ〜って思いますよ!」

 面と向かってこう言われたこともある。
 ではなぜ譜面が見えやすくなるハイスピードを入れないのか。スコアだって伸びるし、BADも減るだろう。自問自答。ポップンをしながら考え事をするのは、よっしーの悪い癖の一つだ。



 プレイに集中することにする。
 三曲目に、まだノーマルスピードではクリアしたことが無い『ヘビィロック』を持ってくる。もしここでクリアできたら、締めとしては最高だ。明日から気持ちよくポップン6を楽しむことが出来る。
 ……案の定クリア失敗。そういえば、ポップン5でクリアできていない曲ってどのくらいあっただろう。ハイパー、EX曲を含めると、結構な曲数になるような気がする。いや、今は考えるの止めよう。好きな曲、楽しい曲を選ぶのがやはりポップンミュージックでしょう。

 明瞭なリズムに合わせて叩ける曲が好き。きれいな歌声の曲が好き。譜面の構成の中が曲のイメージとぴったり合っていると嬉しくなる。リズムが解って嬉しくなった『モンドポップ』、歌声と譜面が秀逸な『フレンチポップ』。『ソフトロック』は自由に駆け抜ける風のようでしたし、実は『ミュージカル』はかなりやり込んだ曲でありました。
 さぁ、お別れにはまだ早い。もう100円でまた何か思い出せそうだ。ノーマルモードで、ノルマだとかチャレンジポイントだとかは忘れてもう一度。
 とうとう十万点は取れないままだけど、『ニューエイジ』は本当に好きな曲。一つの曲の中にドラマを盛り込もうとした『キネマ』も好き。忘れちゃいけない『US-ダンスポップ』。ノーマルスピードに切り替えて最初に躓いた曲だけど、今はこれだけきれいに叩けるようになったよ。

 そろそろ締めの構成を考えないと。
 ここで思いついたのが『アニメヒロイン』、『ミュージカル』、『ヨーデル』のポップンステージ楽曲でした。特に三曲目のハイパー『ヨーデル』はノーマルスピードでは三、四回しかクリアしたことのない曲です。さっき『ヘビィロック』をやったときは無理だったけど、これならクリアできるかも知れない。やはり最後は気持ちよく何かをクリアして終わりたい。
 ノーマルスピードでの同時押しの見切りを学んだ曲の一つ、『アニメヒロイン』。難易度以上の手応えが妙に心地よかった『ミュージカル』。何度叩いても楽しくて仕方なかった『ヨーデル』。好きな曲と、限界の壁が近い位置にあると、練習がまったく苦にならない。
 ……あ、クリア失敗。締めの失敗。すぐ後に「FREE2」でハイスピードとノーマルスピードでハイパー『ヨーデル』を一回ずつ叩いてみるが、やはりクリアに失敗した。どうやら仕事にかまけて叩いていない間に、クリアの仕方を忘れてしまったらしい。

 まだ時間はある。どの曲でポップン5を締めようか。
 ポップン5はノーマルスピードでの挑戦がテーマ……そうだ、『パワーフォーク3』にしよう。譜面の流れる速度の遅さと、ゲージが0になった時点で曲が終了するEX曲であるという二つの条件が重なり、意外に難度の高い曲なのだ。しかも、ノーマルスピードでクリアしたことが一回だけある。今ここでもう一度再現してみよう。
 ここで初めて「チャレンジモード」を選択。もうノルマとかチャレンジポイントとかを考えるのが嫌だったので、『カラオケ(6)』『ティーンフォーク(7)』『ニューエイジ(6)』でトータル19ポイントを叩き出し、最小ポイントで『パワーフォーク3』を出すことにしました。
 あえて低難度の曲を選び、叩く。日頃そういうことがないので、逆に新鮮でした。やってみれば意外に高得点が出ることもあり、曲がりなりにも実力の底が上がっていることに気がついたりもして。
 そして出ました『パワーフォーク3』。やってみれば、十秒も保たずに撃沈。あぁ、やはり集中力も落ちてきているな。やはり疲れているようだ。でも、不思議とそんなに悔しくない。そうだ、やはり肩肘張ってプレイするのはらしくないな。

 今日のラストプレイ。叩く曲はもう決まっていました。
 もう一度チャレンジモードを選択し、とうとうハイパーまでまったく気が回らなかった『ハイテンション』を「BAD5以下」のノルマでクリア。加えてさんざん叩いたハイパー『パラパラ』に「ジャミング」のお邪魔をかぶせてクリア。炎さえ出なければクリアは簡単。定番のポイント稼ぎで、今はもうやらなくなったやり方だ。最後はお決まりの『ソフトロック』に軽いお邪魔をつけて、ポイントはぴったり85ポイント。もう一度『パワーフォーク3』? いいえ、ここで叩くのは『フレンチポップEX』です。

  夕暮れ真夏の帰り道
  降り出した雨に駆け出したの
  少し背が伸びた夏休み
  なぜかしら涙 こぼれそうよ

 やっぱり良い歌です。譜面も曲にぴったり合って、無理をして叩くところがありません。
 曲と譜面と自分とか協力して一つの音楽を組み上げる。やはりポップンミュージックってゲームはこうだよなぁ。ポップンをしながら考え事をするのは、よっしーの悪い癖の一つだ。もとより特に好きでもない曲を、譜面の難度が高いから、という理由でガシガシ叩くのは性に合っていない。だからこそ好きな曲と自分の限界が近い位置にあると嬉しくなる。思えば『パラパラ』もポップン5を代表する曲の一つであり、お気に入りの曲の一つであったのです。こうして好きな曲と一つになり、共に曲を紡ぎだしている時間が好き。
 ノーマルスピードで叩いているのは、自分で用意した自分のためのハードル。
 だから少しも、辛くない。



 気持ちよく叩き終わり、これでポップン5はおしまい。
 ポップン6でもお気に入りの曲とキャラが見つかりますよう。

 願わくばここまで読んでくれたきみにも、ポップン6で何かを見つけることを願って。