第六話・長靴履いたうさぎの世界一周

 ポップン6における、エキスパートコースをご存じだろうか。
 特定のテーマに基づいて選ばれた四曲を、エキスパートゲージ(ミスをするたびにグルーヴゲージが減少していく)をもって駆け抜けるという、ポップン界での一騎掛け。ささいなミスが即、死(ゲームオーバー)に繋がる真剣勝負。ポプ者なら己の実力を試そうと、一度は叩く扉であるといえよう。

 エキスパートの起源は古く、ポップン3における「ハイパーモード」にまでさかのぼる。
 ハイパーモードでもやはり特定のテーマで曲目が組まれ、BADを出すとゲージが減少、GREAT、GOODを出してもゲージは回復しない。しかもゲージが0になった瞬間に即終了という硬派なゲーム性で多くのポプ者を魅了していった。

 さて、一方よっしーはその頃どうしていただろうか。
 ポップンに入るきっかけとなった『ポップス』がハイパー譜面となってハイパーコースに復活していたので、そりゃあやり込みましたよ!
 ですが。
 ゲージを大きく削られ、いつも二曲目で轟沈していました。一時期は中盤のゴチャゴチャした部分を写真に撮って譜面解析しようとしたこともありましたが、当時購入した簡易インスタントカメラではそもそも撮影に限界があり、結局自分で撮影して譜面解析、というところまでは行きませんでした。
 その頃、かろうじてクリアできたのは『J-テクノ』→『ダンス』→『テクノ'80』で構成された「エレクトリック」コースのみ。『J-テクノ』はいつまでもBAD0にならず、『ダンス』でゲージを斬らせて息からがら骨を断ち、『テクノ'80』でわずかに残ったゲージを取りこぼさないように慎重に叩く、というタイトロープポップンでありました。

 そしてポップン6、エキスパートコース。
 インターネットランキング対応となり、全国のポプ猛者が鎬を削っておりましたが、こちらはどこ吹く風という雰囲気。そもそもまともにクリアできるコースが「パーキッツコース(初心者向け)」しかありませんでした。
 闘える人は、闘えばいい。
 こちらはノーマルモードで極力BADを減らしていくよう練習していこう。
 そう思い、インターネットランキングにパーキッツコースで登録を終えた後、一時期完全にエキスパートコースのことは頭から消えました。

 しかし。
 ポップン6のサントラが発売された2001年6月27日。
 この日にポップン公式サイトで隠し情報が公開されました。

 エキスパートコースに、隠しコースが存在する。

 設置店の方で、内部の設定をいじることで初めて現れる隠し要素。新しく用意されたエキスパートコースは、新曲のみならずかつての名曲や、家庭用の曲までもが盛り込まれた好セレクションでありました。
 「当分の間、ポップン6で遊んでいられる!」
 敷居が高く、エキスパートのことを忘れかけていたよっしーをも、再びエキスパートの舞台に引き戻すに足る、あまりにもまぶしい隠し要素でした。遊び尽くされたと思っていた空間の向こう側に、さらに広い大地が広がっていた……そういう感じでした。

 しかもしかもしかもッ!
 特筆すべきは「和コース」の裏である「ワールドコース」ですよ!
 『アメリカ(H)』→『スコティッシュ(H)』→『オキナワ(H)』→『カントン(H)』
 (H)はもちろん「ハイパー譜面」の意味です。
 そう。ポップン3でうなるほど叩いてきたCathy Lauさんの『カントン 〜和称一起走〜』に、ハイパー譜面が追加されて帰ってきたのですよ!(毎度の事ながらちゃんと漢字が出ないのがもどかしい)
 おまけに、旧曲の中でハイパー譜面が新たに追加されたのはこの一曲だけ。
 遙かな時を越えてようやく咲いた一輪の名曲。場所は世界の最果て、エキスパートの彼方!

 「フフ……フフフ。エキスパートコースなどなかば忘れかけていたが、こんなのを突きつけられては黙ってはいられんな……。いいだろう。アメリカの広野を駆け抜け、スコットランドの丘を駆け上がり、オキナワの青い海を越えて中国までたどり着いてやろうじゃないか! そう、言うなればこれはまさに世界一周……マイキャラはミミだから、長靴履いたうさぎの世界一周だ! エキスパートゲージがなんだというのだ。BADを出さなければ良い話! 親父見てくれ俺はやる!
 ……それはそうと、スコットランドってどの辺だっけ?」

 先が思いやられる。


 <つづく>